ソーシャル・キャピタルを活用した生き方を (中道實)
- 2010/02/08
- 中道實
ソーシャル・キャピタルを活用した生き方を ―奈良大学を辞すにあたり―
ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)という言葉があります。キャピタルとは、人間関係のネットワークから得られる資源(情報、アイディア、富、影響力、信頼、チャンス等)を指しています。こうした資源は、ネットワークの中に内在してキャピタルと言うように生産力をもち、その活用は価値を創造し、物事・目標を達成する「配当」を生み出します。
日本人は、元来、他者との関係の中からにんげんは生まれ出、他者とともに成長していくという「間人(かんじん)主義的価値観」をもっていると説くのは、社会心理学者・濱口恵俊(はまぐち えしゅん)です。そして濱口は、自他の相互連関を配慮し調整したうえで行動する連帯的自律性を確保した「関係体」の編成原理が日本社会の構造的特質であると言います。
少し旧いですが、1998年に、総務庁(現・総務省)青少年対策本部が、日本の中学・高校生を対象に、人が成功するために必要なことは何かを調査したところ、個人の才能と個人の努力が上位2つを占めました。この背景に、成功するか否かは個人の努力と才能次第であるという個人主義を至高価値とする、日本の若者たちの共通の意識が透かし見えます。
ところで、ソーシャル・キャピタルには、個人主義的価値は神話である、というメッセージが含まれています。努力や才能といった個人の諸属性は、周囲の人々との関係の中で発見され育成され発達するものです。
私たちは、親密な相談相手、友人・知人、あるいは同窓会、ボランティア等々の多様で異質なネットワークを複合的に形成しています。それらをつなぎネットワークを拡大することによって、ソーシャル・キャピタルは増加します。
「北へ行きたいなら南を目指せ」。まず、自分のネットワークを使って他者に貢献する、他者は期待を超える援助を返す、相互支援の精神を大事にし、他者を援助することで自分に返ってくる循環に投資する、それがソーシャル・キャピタル活性化のルールであり倫理です。
私は、これまで奈良大学の多くの学生のみなさんと出会ってきました。全国で学卒者が大量に輩出され、進路をめぐる状況が厳しい中、奈良大学の学生のみなさんに、開かれたネットワークを構築し、その「見えざる資産」を活用して、人生キャリアを発展させていってほしい、と、送別の辞を贈ります。

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